
新宿区・新大久保で、相続問題に力を入れている弁護士の水谷真実です。
遺産分割では、言いたいことを全部書くより、「裁判所に何を判断してほしいのか」を意識して書面を整理することが大切です。
遺産分割調停が続いていると、相手の言い分に納得できず、「それは違う」「事実と違うことを言っている」と主張書面に書きたくなることがあります。
遺産分割調停の手続や進み方については、「遺産分割の調停について」で詳しく説明していますが、**調停が長く続くほど、遺産の分け方だけではなく、これまでの親族間の経緯や不満が表に出てくることもあります。
特に、長年の親族間の経緯がある場合には、これまでの不満も含めて裁判所に伝えたくなるかもしれません。
しかし、裁判所に提出する主張書面では、相手への不満をそのまま書くことが、必ずしも自分の主張を伝えることにはなりません。
では、どのようなことを書き、どのような表現は避けた方がよいのでしょうか。遺産分割調停の主張書面を作る際に意識したいポイントについて説明します。
遺産分割では、長年の不満が出てくることがあります
産分割では、相続人同士のこれまでの関係が、話し合いに影響することがあります。
たとえば、
- 誰が親の面倒を見てきたのか
- 誰が実家や不動産を管理してきたのか
- 生前に誰がお金や不動産をもらっていたのか
- 相続が始まった後、誰がどのような対応をしてきたのか
などについて、それぞれの相続人に言い分があることも珍しくありません。
特に、相続が始まってから長い期間が経過している場合には、遺産をどう分けるかという問題だけでなく、それまでの親族間の出来事や不満が積み重なっていることもあります。
そのため、家庭裁判所に提出する主張書面にも、
「相手は嘘をついている」
「自分ばかりが負担してきた」
「相手のこれまでの対応はおかしい」
などと、これまでの不満を書きたくなることがあります。
しかし、主張書面は、これまでの不満をすべて裁判所に伝えるためのものではありません。
大切なのは、
「今回の遺産分割について、裁判所に何を判断してもらいたいのか」
という点です。
そのため、相手への評価や批判を書くことよりも、遺産分割の判断に関係する具体的な事実を整理して書くことが重要になります。
「嘘をついている」ではなく、具体的な事実を書く
例えば、ある相続人が調停の中で、「生前に不動産の贈与を受けた」と話していたにもかかわらず、その後、「勘違いだった」などと説明を変えたとします。
このような場合、「相手は嘘をついている」「虚偽の説明をしており信用できない」と書きたくなるかもしれません。
しかし、主張書面では、
「第〇回の調停期日において、相手方は〇〇と述べていた。その後、相手方は△△と述べている。」
というように、実際にあったことを客観的に書く方法があります。
「嘘である」「信用できない」というのは、その事実に対する評価です。
それよりも、相手がいつ、どのような説明をし、その説明がその後どのように変わったのかを具体的に記載した方が、調停委員や裁判官にもどこに問題があるのかが伝わりやすくなります。
また、説明の信用性をどのように評価するかは、最終的には裁判所が判断することになります。
そのため、自分の評価を強い言葉で書くよりも、判断の材料となる具体的な事実を示すことが大切です。
書いた後に「それで、何を求めるのか」を確認する
もう一つ心がけたいことは、書いた事実と、自分が求める結論をつなげることです。
例えば、生前贈与について詳しく書いたのであれば、「その生前贈与を特別受益として考慮してほしい」という主張につながっているでしょうか。
生前贈与があった場合に、それが遺産分割でどのように扱われるのかについては、「相続で公平を保つために~親から貰ったお金 特別受益や持戻し免除について~」で詳しく説明しています。
不動産について書いたのであれば、「その不動産を売却して代金を分けたい」「自分が取得して、他の相続人には代償金を支払いたい」など、自分が希望する分割方法につながっているでしょうか。
相手の過去の言動を何ページ書いても、それが遺産分割について裁判所が判断する事項と関係しなければ、肝心の主張が分かりにくくなってしまいます。
主張書面は、長ければよいというものではありません。
「具体的な事実」→「その事実が遺産分割にどう関係するのか」→「裁判所に何を求めるのか」という順番で考えると、整理しやすいと思います。
書面を書き終えた後に、**「この事実を書いたことで、裁判所に何を判断してもらいたいのか」**を一度確認してみると、必要な主張と、必ずしも書く必要のない内容を整理しやすくなります。
相手への不満と、主張書面に書くことは分けて考える
遺産分割は、家族や親族の間の問題です。
話し合いが長く続けば、相手の対応に腹が立ったり、これまでの経緯について「裁判所にも分かってほしい」と思ったりすることもあるでしょう。
しかし、相手に対して言いたいことと、裁判所に提出する主張書面に書くべきことは、分けて考えた方がよいと思います。
書面を作成した後に、
「この一文は、裁判所が遺産分割について判断するために必要だろうか」
という視点でもう一度読み返してみてください。
「嘘をついている」
「身勝手だ」
「いい加減にしてほしい」
といった表現を削ったからといって、主張が弱くなるわけではありません。
むしろ、そのような表現を減らして、その代わりに具体的な事実を書くことが大切です。
相手をどう評価するかではなく、「いつ、何があったのか」「それが遺産分割にどう関係するのか」を整理することで、裁判所にも自分の主張が伝わりやすくなります。
まとめ
遺産分割の主張書面では「何を判断してほしいのか」を意識する必要があります。
遺産分割調停では、これまでの家族関係や相続人同士のやり取りから、相手に言いたいことがたくさん出てくることがあります。
しかし、主張書面で大切なのは、相手を批判することではありません。
具体的な事実を示し、その事実が遺産分割にどのように関係するのか、そして裁判所に何を判断してほしいのかを分かりやすく伝えることです。
書面を書き終えたら、
「これは遺産分割の判断に必要な内容だろうか」
「この事実について、裁判所に何を判断してもらいたいのだろうか」
という視点で読み返してみるとよいでしょう。
遺産分割では、生前贈与が特別受益にあたるのか、不動産をどのように評価・分割するのか、過去に分けた財産をどう扱うのかなど、法律的な整理が必要になることもあります。
遺産分割そのものについてどのように進めればよいか分からない場合や、相続人間の話し合いが難しくなっている場合には、弁護士に相談することもご検討ください。
当事務所の遺産分割に関するご相談や、弁護士に依頼した場合の進め方については、「遺産相続の割合の争いを解決したい(遺産分割)」でご案内しています。


